酒川郁子『宗教村 ~カルト教団に家族を洗脳された女~』-破壊的カルトに取り込まれる恐怖

『宗教村 ~カルト教団に家族を洗脳された女~』を読んだ。作者は酒川郁子先生。
連載は、デジタルコミック誌 『ダークネスな女たち』で続いていて、完結していないが、第8話まで読んだ感想。
カルト教団『讃燦会』が占拠する村に、身分を隠して潜入した新米警察官の渋谷奈緖子。
入植したばかりの奈緒子を待っていたのは、77歳になった老人たちを天寿を全うしたとして、殺害する怖ろしい宗教儀式だった。「みなさんもお祝いしましょう、光と共に!!」先導者が掛け声をあげると、それに応え歓声を上げ、殺人を祝福する信者たち。
相当にショッキングな導入部だ。
実はこの渋谷奈緖子、幼い頃『讃燦会』に洗脳された母親に無理やり連れられて、この村に入植した過去を持つ。
本名は、河辺美和。『讃燦会』に賛同できない美和の父親は、妻の説得を試みるが、果たせない。
せめて娘だけでも助けたいと画策し、美和の奪還にはなんとか成功するが、自らは、信者たちに追われ殺されてしまう。
村から逃げ出した幼い美和は、父親の友人で刑事の島崎に育てられ、潜入捜査官として因縁の村に戻ってきた。
過去と現在が交錯する形で、物語は進んでいく。
母親が『讃燦会』に入信するきっかけは、『讃燦会』で販売していた自然農法の野菜だった。
娘のアトピーを治すための行動が、結果、家族を崩壊させていく。
宗教団体という実体を隠し、自然農法の野菜で興味を引き、まやかしの理想の世界を見せ、共感し承認欲求を満たすことで、人の心を掌握する。そんな洗脳の手口が描かれていて興味深い。
信仰は自由だが、教祖が絶対的な法になるようなカルトは、組織にどんなに矛盾を抱えていても自浄作用がきかなくなる。どこまでも暴走する。
反社会性の強い、破壊的カルトに取り込まれてしまう怖ろしさが、存分に描かれている。
美和はカルトの闇を暴くことができるのか、村に残る洗脳された母親との対峙は!?
今後の展開に期待したい。