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雨宮鬱子『証券会社で働いたらひどい目にあった』-証券会社に入社した新入社員がパワハラで退職するまで

証券会社で働いたらひどい目にあった

雨宮鬱子先生の『証券会社で働いたらひどい目にあった』読了。

タイトルからも分かる通り、証券会社がどんなにブラックなのかが詳細に描かれたコミックエッセイ。

体育会系の根性論が横行し、上司や先輩には絶対服従を強いられる。
上司によるみんなの前での恫喝、叱責。飲み会での人格否定。パワハラ、いじめ。意欲的な新入社員が、パワハラからうつ病を発症して休職。2年ほどで、某証券会社を去るまでが描かれる。

発行年は、2013年。証券会社で働いた時期は2010年前後くらい。

それから10年以上が経ち、体質的に変わったところもあるだろうが(あると信じたい)、心を病んで退職に追い込まれた若者がいたという事実は消せない。

「ほうれんそう」というのは、報告連絡相談のことだが、この重要性を理解しながら、ほうれんそうができない社員になっていったくだりが切ない。

上司に報告連絡相談しても、すべて悪く取られる。
それは上司側に、この社員は「仕事ができない」「反抗的だ」という決めつけがあるから。上司の側は、難癖をつけようと思えば、何とでも理由をつけて叱責することができるのだ。

課長に怒られたくないがために、ほうれんそうを避けるようになってしまう。

指示待ち人間になるまいとしても、どの道怒られるのなら、言われた通りのことだけをしようと考えるのは、ごく当然のこと。この会社に限らず、揚げ足ばかりを取って、仕事の裁量を与えない上司が、指示待ち人間を作っている側面もあるだろう。

「うちの会社は指示待ち人間ばかりで」と上が言うとき、もともとそういう社員だったのかは考えなくてはならない。

円滑な人間関係が築けず、すべてを否定されると、人は簡単に壊れていく。
仕事をする意味を失うし、自己信頼も、粉々になる。
自分をどこまでも責め続けるシーンは、見ていてつらい。

昨今若者にコミュケーション能力を過剰に求める風潮があるけど、じゃ上司にその能力があるかと言えば、この上司はパワハラでうつ病にまで追い詰めているのだから、ないよねぇ。

コミュニケーション至上主義は、ある意味怖ろしいと思うし、上は、胸に手を当てて考えないといけないんじゃなかろうか。

ただ雨宮先生は、コミュ力がないようには見えない。学生時代にはバイトなどそれなりに、自信を持っていたようだ。
入った会社が悪いと、それなりにコミュ力があっても、太刀打ちできないことがよくわかる。

会社の文化は、外から見ると、すごく偏っていることもある。
だけど、渦中にいると、その偏りに気づけないことも多い。そこの価値観だけで、自分の価値をはかってしまうと、必要以上に自分を責めることにもなる。会社での価値と、個人としての価値(価値と言う言葉もちょっと違うような気もするけど)は、切り分けた方がいいと思う。

あと、お客さんのニーズなんかお構いなしにキャンペーンの商品をゴリ押ししてくるところなど、証券会社のリアルがわかって、勉強になった。

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