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川崎苑子『りんご日記』-おっちょこちょいであわてん坊、ズボラで横着。愛すべく我らがりんご

りんご日記

川崎苑子先生の『りんご日記』再読。

子どもの頃行っていた床屋に、他のマンガ雑誌と一緒に『週間マーガレット』が何冊も置いてあって、順番を待ってる間、むさぼり読むのが楽しみだった。
もちろんお目当ては、川崎苑子先生の『りんご日記』と『あのねミミちゃん』。あと土田よしこ先生の『つる姫じゃ〜っ!』とか。面白い話が沢山載っていたが、当時の乏しいお小遣いでは週間マンガを買うのは、無理な話。

後にコミックスが出ていることを知り、集め出すのだが、それは後のお話。

なので、床屋に行ったときには、この機会を逃すわけにはいかないとばかりに、床屋が終わっても読みふけり、終いには、帰ってこないのを心配した母親が迎えに来ることもあった。

それほど心奪われたマンガが、この『りんご日記』。

主人公は、一ノ木りんご。
演劇部の先輩さやかさんに「どっかの果実組合みたいな名前、忘れないわよ」と言わしめた、インパクトのある名前。
タイトル通り、一ノ木りんごが今日の出来事を日記に書くという体裁をとっている。

性格は、おっちょこちょいであわてん坊、ズボラで横着、食べ物には意地汚い。愛嬌があって情にもろく、ときどきこずるいとこも見え隠れする。
ナイーブなところとおばちゃんのような図々しさが同居する、憎めないキャラクター、一ノ木りんご。
そして、何と言ってもチャームポイントは栗色の巻き毛。

りんごを真似て、栗色でも巻き毛でもロングヘアでもなかったが、500回ブラッシングをやってみたこともあった。それほど影響力は、絶大。

そして、周囲を固めるキャラクターもまた個性豊か。
りんごの幼馴染で成績優秀、スポーツ万能、りんごに想いを寄せる星くん。目が細くて見かけによらずお金持ち、星くんのライバル、番長。りんごの憧れ、立木先生。言葉尻に「ずら」をつける、変わり者のお隣のお姉さん。美人で高慢ちきで、でもいいとこもあるルリコさん。おとなしくて出来の良い妹、すもも。

生き生き動くキャラクターたちに何度笑わせてもらったか、わからない。
ジャンルはギャグマンガなのだと思うが、ジャンルの垣根を越えてハートに響く。
読み返せば、りんごたちが躍動する。

描かれるのは、小学校6年生から中学3年生の高校受験目前まで。

印象深い話は、りんごが期末テストの勉強をする話。
憧れの立木先生のため、テスト勉強の綿密なスケジュールを組むが、そこは、勉強嫌いなりんごのこと。教科書を開けば眠り込む。

「そうだわベッドで勉強すりゃいいんじゃない あったかいし はかどるわっ」とベッドに入るりんご。当然すぐに爆睡。

読みながら、そりゃそうだろと、可笑しくて思わずツッコミを入れてしまう。

結局、テスト勉強は全く進まず、最後は「どーか学校を突然休校に!」と神頼み。

テスト勉強がはかどらないとき、この話には大いに共感し、慰められた。
りんごと同じ末路を辿り、試験は散々なわけだが、またそれもよしと笑い飛ばせるのは、明るいりんごのおかげ。

川崎先生の昔の作品は、『タンポポとりでにあつまれ』『りんご日記』『あのねミミちゃん』など、どれも高値がついていてなかなか手に入らない。りんごに夢中になった世代がもう一度読みたいと思うマンガなのだ。

マーガレットコミックスの『りんご日記』は手放してしまった。その後、ワイド版の1、2巻を買ってみたが、3巻がなかなか手に入らない。

『土曜日の絵本』は電子書籍化されているので、『りんご日記』も電子書籍化してほしい。

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