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美内すずえ『魔女メディア』-「血の伯爵夫人」エリザベート・バートリをモデルとしたホラー

魔女メディア

何十年来の『ガラスの仮面』ファンなのだが、現在は、長期休載中。50巻を読みたいと思いながら、早何年。
美内先生、どうか続きを書いてくださいませ、と心の声が思わず出てしまう。

ということで、昨日の『孔雀色のカナリア』に引き続き、美内先生の『魔女メディア』を再読。マーガレットコミックス。初出は、昭和50年の別冊マーガレットになっている。

主人公は、母のないリリー。母の死後、繰り返し恐怖の夢をみるようになる。

霧の中に聳え立つ巨大な塔。
前を歩く人影に誘われて、塔の階段を昇る。階段の先には、黒い十字架のついた鉄の扉。
扉が開くと、とてつもない恐怖がリリーを襲う。

いつもそこで目が覚める。

父が亡くなり、叔父夫婦の家族に引き取られるリリーだったが、厄介者扱いで居心地の悪い思いをしている。

叔父一家とリリーは、叔父が管理する古城をホテルへと改装するために出かける。
果たしてそこには、リリーが繰り返し夢にみた塔があった。

この見事なオ-プニング。怖いもの見たさで固唾をのんで、ページをめくった記憶がある。塔へと続く古びた階段が、暗く怖ろしい。

謎の美女の肖像画が幾枚も飾られてる。なぜか、額を隠すように塗りつぶされて。
古城の地下には、拷問部屋があり、通路の壁や庭からはおびただしい白骨が発見される。

城の謎を疑問に思った旅行者ライアンが調べると、魔女メディアの存在が明らかになる。
肖像画の蠱惑的な人物は、メディアだった。今から300年前、この城に住むメディアは悪魔信仰から家族を一人ずつ殺し、更には、近隣の村の若い娘を数多くさらい、悪魔に生贄として捧げていた。

魔女裁判で、部下は全員火あぶりになったが、メディアだけは王家の血筋だったので、塔のてっぺんの一室に生涯幽閉された。

メディアとリリーの関係性が次第に明らかになっていくのだが、それはもう見事。
メディアが乗り移ったリリーが驚くほど美しい。内気なリリーから残虐なメディアへ、その変貌ぶりには目が釘付けになる。
ちなみに表紙もリリーではなく、死神のカードを持ったメディア。

メディアは、「血の伯爵夫人」と呼ばれたハンガリーの貴族、エリザベート・バートリという実在の人物をモデルにしていると思われる。
エリザベートは、召使や農奴の娘、貴族の娘をさらい拷問にかけ、若さを保つためその血を浴びたと言われる。
殺した数は、600人にものぼるとも言われ、吸血鬼伝説のモデルともなった。

この辺りは、桐生操先生の『血の伯爵夫人 エリザベート・バートリ』に詳しい。

魔女メディアと同じように、エリザベートは高貴な血筋だったので死刑にならず、扉と窓を塗りつぶしたチェイテ城の自身の寝室に生涯幽閉された。

学生だった当時夢中になって読んだ『魔女メディア』、今読んでも色あせない魅力があります。

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