和田慎二『大逃亡』-『スケバン刑事』の原点ともいうべきアクションマンガ

今日は、和田慎二先生の『大逃亡』を再読。
手元にあるマーガレットコミックスの初出は、昭和49年の『別冊マーガレット』になっている。
和田先生は、子どもの頃大好きだった漫画家。
『銀色の髪の亜里沙』『超少女明日香』『スケバン刑事』『怪盗アマリリス』『ピグマリオ』『少女鮫』『愛と死の砂時計』『オレンジは血の匂い』『呪われた孤島』など、胸を高鳴らせてむさぼり読んだ。
和田先生が、鬼籍に入られたときは、これで『超少女明日香』の続きが読めなくなるのかと思うと、本当に悲しかった。
『大逃亡』は、『スケバン刑事』の原点ともいうべき作品。
主人公は、江木万里亜。冬の嵐の日、万里亜が少年院を脱走するシーンから始まる。
資産家の娘として何不自由なく育っていた万里亜だったが、祖父の死後、みよりのない万里亜の家に後見人として叔母一家が乗り込んでくる。
財産を我が物にしたい叔母の謀略により、万里亜は少年院へ送られることとなる。
院生たちの悪意と暴力にさらされ、強くなりたいと願った万里亜は、次第に悪そのものへと磨かれていく。そして、かつての婚約者に会うために少年院を脱走するが、婚約者は心変わりをしていて、万里亜を拒絶する。
保護司の沼重三に追い詰められ、万里亜はローレンス・タルボット神父が営む孤児院へと逃げ込む。
先生の作品には、一度作品に出たキャラクターが別の作品に登場することがよくあるが、この『大逃亡』でも『スケバン刑事』『超少女明日香』にも登場する名脇役、沼重三が出てくる。ちなみに『スケバン刑事』『超少女明日香』では高校教師役。
長く垂らした前髪で頬の火傷の痕を隠しているが、これは逃げる万里亜に投げつけられた硫酸でできたもの。
万里亜を憎む沼だったが、皮肉にも万里亜に命を助けられる。
『スケバン刑事』の6巻では、沼が万里亜の墓の前で手を合わせているシーンがある。
そこに現れた麻宮サキを万里亜と見間違えて、ハッとする。
サキの生き方を万里亜のそれと重ねて「似ていると生き方まで似るのかな」と言うのだった。
和田先生の作品には、スター・システムというのか、こんな風に一度作品に出たキャラクターが別の作品に登場することがちょいちょいあって、それもまた作品の醍醐味になっていた。神恭一郎、沼重三、海堂美尾、スガちゃん、漫画家の岩田慎二(自身のキャラクター)など、見知ったキャラが登場すると、ワクワクしたものだ。
パラレルになっていたりそうでなかったり、…こういう作品群の楽しみ方があることを知ったのも、和田先生の作品だった気がする。
『銀色の髪の亜里沙』や『大逃亡』のような短編が、後の『スケバン刑事』に結実して、大胆なアクションとスケール感、陰りを帯びた麻宮サキの活躍にしびれっぱなしになるのだった。