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坂田靖子『マーガレットとご主人の底抜け珍道中』-屈託のない奥さんと慌てん坊のご主人の心あたたまる物語

マーガレットとご主人の底抜け珍道中

坂田靖子先生の『マーガレットとご主人の底抜け珍道中』を再読。
ハヤカワ文庫JAは、旅情篇と望郷篇の全2巻だ。

坂田先生の作品の中でも、とりわけ気に入っている作品。

友人と些細なことで喧嘩した。貸していた数冊のマンガ本の中に、この2冊が入っていた。友人は本を返してくれず、催促するのも気まずく、結局返されじまいのままとなった。

友人と関係が切れたことと、お気に入りの本が返ってこなかったこと、二重の意味で、苦い思い出だ。
その後、どうしても読みたくて、もう一度買い直した過去がある。

自由奔放で屈託がなく、どこか浮世離れしたマーガレット奥さんは、大の旅行好きで、日常を楽しむことの名人。慌てん坊で食いしん坊のご主人のタルカムさんは、マーガレット奥さんに始終振り回されっぱなし。あわあわしながら、後をついていく姿が、微笑ましい。

世界各地の旅のエピソードが楽しいし、日常的な小さなストーリーも素晴らしい。
そして、なんといっても、食べ物が美味しそう。

ゲームパイ、羊の煮込み、ポリッジ、ボイルドビーフ、おだんごのシチュー、レモンパイ、クリスマス・プディング!!
どんな料理なのか興味が湧くし、読んでいるとお腹がすく。新鮮なニシンは、このマンガのおかげで食べられるようになった。

坂田先生の柔らかな、線を極力省いたタッチが、物語に奥行を持たせている。
まだ見ぬ異国の地への想像力を掻き立てる。

ネッシーを一人探しに出た奥さんを、ご主人が追いかける「大ネッシー探険」、今はない都に、ご主人が迷い込んでしまう「失われた都」、奥さんがお友達から預かったダルメシアンとご主人が仲良くなっていく「名犬ナポレオン」、ご主人さんがまだ少年だった時代、女の子に雪ダルマを作ってあげる「雪の日」、家の中に迷い込んできたミミズクから逃れるため、二人でリビングの床に寝ながら未来に思いを馳せる「アラウンド・ザ・クロック」など、楽しく、不思議で、心あたたまる素敵なお話がいっぱい。

慈しみあう二人の姿に癒される。

嫌なことがあった日にページをめるくと、ささくれ立った心が少しずつ元気を取り戻すことができる、…そんな素敵な物語だ。

今は、電子書籍でも読めるようです。

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