川崎苑子『土曜日の絵本』-失われた子どもの時間を一時、取り戻せるような本

先日紹介した、川崎苑子先生の『りんご日記』に引き続き、同じく川崎先生の『土曜日の絵本』再読。
手持ちの文庫版の初出は、『週間マーガレット』1979年になっている。
リアルタイムでは読んでなくて、大人になって読んで、その優しい世界観に魅了された。
『りんご日記』や『あのねミミちゃん』の系譜を引き継いでいるところもあるが、もう少し叙情的だ。
主人公は、 男の子のような元気な女の子、ミクちゃん、6歳。風吹町に引っ越してくるところから始まる。
引越早々、パパとママがケンカし、ママは家を出てしまう。ふてくされて、家を飛び出したミクちゃん。そこで、見つけたのは、シロツメクサいっぱいの野原。
ありったけの怒りを込めて「ばーろーっ(バカ野郎)!!」と叫ぶ。
それを見て、驚き呆れたのは、野原で遊んでいた3人の子どもたち。
そこでミクちゃんは、カスミちゃん、ヘイちゃん、ミチルくんと出会うことになる。
非友好的に出会った4人だが、ミクちゃんの大切な絵本が、川に流されたことをきっかけに仲良くなる。
洋品店の長男、口が達者でオシャレでミクちゃんのケンカ友だち、ミチルくん。地味で目立たないけど、物知りで穏やかなヘイちゃん。見た目ふわっとしてるけど、奥ゆかしく、しっかり者のかすみちゃん。元気できかん坊、だけどナイーブな一面も持つミクちゃん。
小学生4人組が織り成す、ショートストーリー。
子どもたちの小さな日常が、美しい風吹町の四季折々の風景と共に描かれる。
一話ごとの扉絵が、本当に絵本のようで美しい。
キラキラした宝物のような子どもの時間。
だけど、ただ甘やかなだけじゃない。
切なさ、やるせなさ、もどかしさ、叶わない願い、色々な経験をして、少しずつ大人になっていく。
子どもが読んでも、もちろん面白いけれど、子どもだった大人にも読んでほしい。
子どもの頃は永遠に子ども時代が続くような気がしていたけれど、そうではないことを知ってしまった大人たちに。
失われた子どもの時間を一時、取り戻せるような本だ。
電子書籍でも読めるのが嬉しい。