沖田×華『はざまのコドモ 息子は知的ボーダーで発達障害児』-周囲の理解が進むことを願わずにはいられない

『はざまのコドモ 息子は知的ボーダーで発達障害児』を再読。
作者は、ご自身もアスペルガーの沖田×華先生。ギャグからシリアスまで、ふり幅が広く、大好きな作家さんだ。
『はざまのコドモ』は、×華先生のアシスタントの君(きみ)さんと、その息子で知的ボーダーのヨシくんの日常を描いたノンフィクションコミックエッセイ。
知的ボーダーとは、知的障害と正常知能のはざまの知能指数を持つ人たちのこと。
専門的には「境界知能」という。IQ(知能指数)は100を中心に正規分布を描くが、IQ85–115の間が、「正常知能」を持つ人たち。70以下の人が「知的障害」とされるが、その境目にあたるIQ70~85程度が「境界知能」と呼ばれる。
主人公のヨシくんのIQは85。知的ボーダーだ。
ヨシくんの場合、赤ちゃんから寝ない子だった。小学校に入り睡眠障害による問題行動を調べるうちに発達障害であることが発覚する。ヨシくんは、何度か知能テストを受けるが、知能指数が規定より高く、知的障害とは認められない。
そして、健常児にも障害児にも当てはまらない、ボーダー児童となってしまう。
障害者じゃないことは一見よいことのようだけど、それは、困っているのに支援が受けられないことを意味する。
知的障害者に交付される療育手帳を発行して貰えないから、色々な援助サービスが受けられないし、療育手帳がないと、希望しても特別支援学級には行くことができない。特別支援学級にも行けず、普通学級の勉強にはついていくことができない。
ヨシくんの行ってる学校は、進学校。学校の学力の平均を下げるから転校しろという教頭や、担任の、やる気を削ぐ心ない行動には、怒りを禁じえない。学校の現状がこうなのかと思うと、暗澹たる気持ちになる。ヨシくんは、1996年生まれ。
今は、もう少し知的ボーダーに対する理解が深まっていると信じたい。
ストレスでヨシくんが自傷行動を始めてしまうシーンが辛い。
母親の君さんが、周囲の無理解の中、ぎりぎりの状態で、ヨシくんのために孤軍奮闘する。本当に頭が下がる。
宮口幸治先生の『ケーキの切れない非行少年たち』を読んでいたので、「境界知能」については多少知識があったが、ひとりの少年として葛藤しながら懸命に生きているヨシくんの姿に心打たれる。
努力しても結果がでなければ、自分はバカだという劣等感を抱くし、誰からも認められなければ、自己不全感はずっと続く。それをうまく言語化して伝えることもできない。発達障害の人は、他者とのかかわりの中で大きなストレスを抱えることが多く、精神を病むなどの二次障害が深刻だとも聞く。
やはり周囲の理解や援助が、大切なのだと思う。
『はざまのコドモ』は、ヨシくんが中学へ入学するところで終わっている。前向きな終わり方で、読後感が爽やかだ。
その後ヨシくんがどういう道のりを歩んだか、知りたいと思う。
×華先生、続きを是非よろしくお願いします!!