たもさん『カルト宗教信じてました。』-教団の内側にいた人しか描けない貴重な記録

昨日は『宗教村 ~カルト教団に家族を洗脳された女~』について紹介したが、カルトつながりで読み返したくなったので、今日は、たもさん先生のコミックエッセイ『カルト宗教信じてました。』を再読。
表紙には、「え、神様っていないの?」というコピーと共に、その事実に愕然とする表情のたもさん先生が描かれている。
10歳のときに母親に連れられて、エホバの証人に入信。二世信者として、部活もできない、希望する進路にも進めない、彼氏も作れないという、個人の自由を極端に制限された中で成長し、同じ二世信者と結婚。息子の病をきっかけに教理に疑問を持ち、35歳の時に脱会。
驚くべき教団の内部事情、マインドコントロールの実態が赤裸々に語られる。
相当に重い内容だけど、絵が可愛らしくユーモアを交えて描かれているため、重くなりすぎずに読み進むことができる。
二世信者として育った、教団の内側にいた人しか描けない貴重な記録だ。
大人であれば、法に触れるような宗教でない限り、何を信仰しても、個人の選択は尊重されるべきものだと思う。信仰に救済を求めるのも、ごく自然のことだ。
しかし、だけど、二世信者の場合は事情が違ってくる。
自我が十分に育っていないから、子どもは無批判に親の考えを受け入れてしまう。あるいは矛盾に気がついても、親のために自分の考えを抑圧してしまう。
自分で選択しているようで選択の余地のない状況は、大きな問題だ。
信者たちのムチによる子どもへの虐待が描かれ心が痛むが、思考を制限され奪われることもまた、虐待だと思う。
人間は不完全だから自分の理解に頼ってはならないという教義は、人を思考停止にして、組織に依存させる。
二世信者は、成人までに親と絶縁して宗教をやめるか、心を病むかのどちらかが多いのだそうだ。
組織を裏切り、親を悲しませても、自分の頭で考え、自分のために生きていいと、たもさん先生が気づけたことは、本当に良かったと思う。
正しさが、年齢、時代、民族、人、属する集団などによって違い、移り変わっていくものである以上、絶対的な正しさ、真理は存在しないのではないだろう。
ひとりひとりがそれを求めて、自分の中に表現していくことが生きることなのではないかと、個人的には思う。
組織に矛盾を感じて脱会した経緯は、ぜひ本書を読んでほしい。
息子さんへの深い愛情が感じられて、あたたかい気持ちになる。
カルト脱出後のお話は、『カルト宗教やめました』をどうぞ。
『カルト宗教信じてました。』『カルト宗教やめました』どちらも、今ならアマゾンの読み放題、Kindle Unlimitedで読めます。