ささやななえ『霊送の島』-民俗学テイストのホラー

ささやななえ先生の『霊送の島』を読み返し。読み方は、「れいそう」ではなく「たまおくり」の島。
今は、ささやななえこにお名前が変わっているが、以前は、ささやななえのお名前で書いていらして、その時代のマンガ。
あすかコミックスの初出は、1991年になっている。
虐待を描いた「凍りついた瞳」シリーズも衝撃だけど、霊や呪術、民間伝承などの民俗学テイストのホラーやサスペンスも数多く描いておられて、『霊送の島』もそんなマンガの一つ。
主人公の沙織は、夏休みを利用して母親と、測候所へ単身赴任をしている父親を訪ねて、国根島にやってくる。
そこで沙織は、大学の研究で来たという河原という大学生に出会う。
オンバラ様というサルを祀る島民は、閉鎖的で、死人が出ると手、足、首の骨を折って埋葬する異様なしきたりを持つ。
死体に悪いものがとりついて、祟らないようにする為だという。
母親が誰かに連れ去られ、沙織は必死に助けを呼ぶが、島民は誰も助けてはくれない。排他的な島民を、沙織は訝しく思う。
翌日、沙織は海から現れた異形のものに襲われ、海に引きずりこまれそうになる。河原がその場にあった石で応戦し、沙織は辛くも逃げることができた。
驚きおののく沙織に河原は、その異形のものは「死体が生き返ったものだ」と、衝撃の事実を告げる。
この島の祭祀遺跡の下にある洞穴は聖域になっていて、強力なエネルギー場のせいで、死体が生き返るのだ。
かつて河原もこの島に両親と暮らしており、4歳の頃、一度死んで生き返っていた。
禁忌を破り、河原を生き返らせた両親は、島民に殺害されていた。河原がこの島に来た理由は、研究のためなどではなく、自分を復活させた洞穴が本当にあるのか、その確証を得るため、そして両親が殺された島の掟を知るためだった。
そして、明かされるオンバラ様の秘密。オンバラ様はサルなどではなかった。
オンバラ様の正体が怖く、悲しいっっ!!
一冊で完結する小品だけど、逃げ場のない島で繰り広げられる、おどろおどろしい怖さは、十分に伝わってくる。
横穴墓群や巨石柱の描写も、リアリティを添えている。こんな島が日本のどこかにあるんじゃないかと思わせてくれるのだ。
ささや先生が横溝正史原作の『獄門島』を漫画化した作品も読みたいと思っているが、相当レアなようで手に入らない。ささや先生が描く仄暗い時代の恐怖が、存分に発揮されているのだろうと想像している。いつかは読んでみたいものだ。